SANTA CLARA 1728 in Lisboa



“視界”

Santa Clara 1728 の意匠を見ていたら
ふと、そんな二文字が浮かんだ。

私達は普段 生きながら
あまりにも多くのものを
視界に入れている。

口や鼻から入ってくる情報ほどではないにしても
目から入ってくる情報も、快、不快を分ける。

だからこそ、
生体工学に則った計算上だけのカタチや
新しさや奇抜さを重視したカタチだけではなく

その空間に足を踏み入れた人の視界に
どんな景色が飛び込んでくるのかを計算して
美しさを創ってゆく。

例えば、全体のバランスを見て
合理的に作られたぎゅうぎゅう詰めの花束ではなく、
360°どの角度から見てもそこに別の景色があるように
感覚的に作られた美しい花束。

このホテルは、それによく似て
ふと視線をやると
場面場面、どこを取っても、すべてが美しいのだ。




エントランスは、常識を覆し
突如、アーティストのリビングに通されたような
はたまた
美術館のロビーに迷い込んでしまったような
幸福な違和感を覚えさせる。
圧倒的なセンス。

トップ画像(ホテルエントランス正面)を見た時に
正面階段の脇にあるエレベーターに
おそらくほとんどの人が気付かないだろう。






改装のために手を加えたものの
現代的な意匠の変更は最小限に留められている。
18世紀に建てられたこの家屋の根幹に息づいている
美しさの「純粋さ」を保っている。

「純粋な美しさ」ではない。
「美しい純粋さ」でもない。


美しさを美しさ足らしめている、その純粋な魂、ということ。





洗面台のシンク。
静かで、ゆるぎない石肌。




排水口!!!




シンプルな客室。
与えられるのは、必要最低限の美しさだけ。
そして窓の外には、テージョ川が一望出来る。

(海や湖に見えるが、リスボンから見えるこれは、川なのだ)




バスルーム。
バスタブの美しさもさることながら
壁のタイル貼りが素晴らしい。

少し歪んだエマイユの
温かな白い正方形やら長方形やらが
タイル壁の冷たさを感じさせない。




食堂。
ここも中世絵画とモダン家具との組合せが美しい。
ライトの細いコードは赤く、白い空間に踊っている。




部屋からは、サンタ・エングラシア教会の
オレンジ色の屋根越しに、燦めくテージョ川。

夏なら22時頃までまだ少し明るいから
よく冷えたヴィーニョ・ヴェルデを片手に
泡風呂に入りながら
夜の帳が降りてゆくのを眺めるのもいいなあ…(妄想)


アルファマと言えば、
リスボンの中でも極めてサウダーデの色濃い
庶民の町、つまり下町なわけだが、
そこに現れた真っ白な
この「視界」の聖地 (※) のようなホテル。
こんな場所で、リスボンの今を堪能したい。






こちらのビデオではSanta Clara 1728が紹介され
空間の美しさやそのディティールを間近に体験出来ます。
是非大きな画面で楽しんで下さい。

Santa Clara 1728 na Cidade #110 from A Cidade na ponta dos dedos on Vimeo.



※面している通りの「聖クララ広場」からホテルの名が付けられている。
 聖クララとはアッシジの聖女キアーラのこと。


Santa Clara 1728
 Campo de Santa Clara 128
 1100-473 Lisboa, Portugal
 +351 934 418 316


Image sorse :  

1. 2. 10 | TRENDLAND
Photograph © Francisco Nogueira

3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 11. 12 | Santa Clara 1728
Photograph © Nelson Garraido

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