ブーツの形をしたイタリアの踵に
プーリア州は、ある。
海の幸には恵まれているけれど
岩だらけのこの土地は作物が育たず
決して裕福では無かったが
それでも人々は知恵を絞り
独自の文化を育ててきた。
プーリアはその独特な景観と
アドリア海の輝き、太陽の光にも恵まれて
今では有名観光地をいくつも抱える風光明媚な州として有名だ。
そのプーリアで今注目されているのが
「Masseria(マッセリア)」と呼ばれる農家の宿。
(この形態はイタリアのその他の州では
「Agriturismo(アグリツーリズモ)」と呼ばれる)
マッセリアはここ5年程、最高のバカンスを過ごしたい人達から
熱い視線が注がれている人気のデスティネーション。
プーリアの地方色が美しい伝統的な家屋が
次々と改築され宿へと生まれ変わっている。
この Masseria Moroseta は
アドリア海のすぐ側で
12ヘクタールのオリーブ畑に囲まれ
地元オストゥーニらしさを残したまま
建築家 Andrew Torotter により改装された
最高に美しいマッセリア。
アンドリューは友人カルロの家族のために
このマッセリアを改装した。
その美しい家に見惚れた私は
当初「個人宅か~ここに泊まれたらなあ~」なんて
指をくわえて見ていたが
なんとカルロは6つのスイートを解放して
宿として経営を始めた。
Bravo !!!!
この、棟と棟の間に作られる階段は、最近
南ヨーロッパで伝統家屋をリノベーションする際に流行っている。
人間がその建築を使用する瞬間、そこに物語が生まれるこの形は
とてもドラマティックで美しい。
映画も、建築も、同じ。
どこを切り取っても画になっていること。
この宿に泊まりに行くなら、宿泊客も服装に気を配らないといけない。
この完璧な、一幅の絵画に入り込むのだから。
私がたまたまネットで目にした最初の画はこの一枚だった。
古い子供の遊具が、伝統的な工法と、建材と、この地方の光と
何の違和感も無く溶け込んでいる。
これは伝統的な中にモダンさが無いことには、不可能な画だ。
置かれるもの、ひとつひとつに
太くまっすぐなこころが、入っている。
荒さと、無骨さと、繊細さが、積み重ねられて
時折ハッとするような透明なフィルターを生み出す。
石のシンクに目が無い私が、一目惚れしたバスルーム。
ベッドルーム。
ヘッドボードと化したタイル貼りの壁棚。
このタイルと、床、ファブリック、ベッドサイドの小物の融和。
優れた感覚的計算の上に成り立っている。
Genius!
こころに、何も遮るもののない空間。
デザイナーでなければ、このサッシを白にしてしまう人も多いだろう。
控えめで美しいオールドキリムと抜群の色合わせ。
ずっと眺めていられるかも!(笑
少し寒く感じるほどの白い空間だが
日が暮れるともちろん、家族のあたたかみが灯る。
屋根の矩形に切り取られた樹齢の高いオリーブ畑。
ここで陽が暮れてゆくのを眺めるのも最高。
ちなみに、Morosetaとは伝説上の海の生き物。
海の中ではアザラシ。陸に上がると美しい人間になるらしい。
アザラシ…ここでゴロゴロするということかしら笑
イタリアに行って、ローマ、フィレンツェ、ミラノ…
と回って満足したことがあるなら
是非次回のイタリア滞在には
プーリアを選んでみてはいかがでしょう。
南北に長く、全ての州が別々の国であったイタリアの
素晴らしい奥深さを堪能できるでしょう。
Masseria Moroseta
Contrada Lamacavallo s.n 72017 – Ostuni
338 18 99 199
Image sorse : REMODELISTA / Arch Daily © Salva López